top of page

公開質問状回答の検証

 

私たちが提出した公開質問状に対する市長様からの回答内容について、精査し、検証しましたので市民の皆様にご報告致します。

回答内容は『建て替え』を前提に、私たちの質問内容に正面から答えず、市の考え方を一方的に主張するもので、逆に建て替え計画の様々な問題が浮き彫りになりました。

 

  • 1について

 新庁舎の規模について、「日立市新庁舎建設基本計画」(平成24年9月)策定時に、必要とされる機能等を市民の意見を踏まえ積み上げたとしているが、限られた一部の市民の意見を聴いたに過ぎず、市民の総意を反映しているとは到底言い難い。

 また、私たちが要望(平成26年2月25日)し、公開質問状(平成26年3月19日)で求めている庁舎規模の算出方法について、何らの見解も示さず、回答を避けているのである。

 新庁舎の規模については「日立市総合計画」(平成24年3月策定)において示された「日立市定員適正化計画」(平成23年3月策定)における、平成28年度職員数を根拠にして算出したとしている。

 東日本大震災以降、当市が直面している顕著な経済活動の停滞や、昨今の人口急減に見合った抜本的行政改革への取り組み(議員定数・市職員定数の見直し、業務の民間委託等による「小さな市役所」、広域行政等)からの視点が算定から欠如しており、過大な新庁舎計画の一因になっている。

 

  • 2について

 東日本大震災前に実施した耐震診断調査において、全ての庁舎が震度6強以上の地震で倒壊の恐れがある、と判定されたことを新庁舎建設の根拠としているが、大震災(震度6強)後に策定した「日立市震災復興計画」(平成23年9月)の中で、現庁舎建物の主要構造部(建物の構造上重要な壁、柱、梁、床、屋根、階段)は被害がなかったことを市自ら認めており、現在も現庁舎の過半をそのまま使用している状況にある。

 市内の他の公共施設(学校、市民会館、博物館等)と同じく耐震改修をすれば何ら使用・構造上の問題はないと思われる。

 また、改築(建て替え)の理由として老朽化、庁舎の分散化・分庁化、狭あい化、バリアフリー等への対応などの問題点を挙げているが、老朽化については先に述べたように耐震改修でとりわけ問題はない。それ以外の分散化・分庁化については、当市の南北に拡がる地形の特徴からも、すでに支所・出張所が機能的に配置され本庁舎を訪れる市民は限られており、昨今の情報化とも相まって特に市民に不便を強いている訳ではない。狭あい化についても「1について」で述べたように、将来の人口減に見合った議員・職員定数削減等を勘案すれば何ら問題は生じないと思われる。バリアフリー化への対応に関しては、現在の技術で如何ようにも対応可能である。

 こうしたなか、震災直後の「日立市震災復興計画」(平成23年9月)で、「その整備方法を改築(建て替え)と位置付けております」と殊更言明しているが、日立市震災復興計画の記述を見ると「改築が望ましい」と言っているに過ぎないのである。

 

  • 3について

 震災復興特別交付税、被災施設復旧関連事業債、合併特例事業債を活用し、返済額の70%強が国から財政支援され、市の財政負担は大幅に軽減されると述べているが、これらを現庁舎の耐震改修に当てたらいったい幾らの財政負担で済むのか、おそらく現在ある庁舎積立金の範囲で済んでしまうのではないかとさえ思う。

 このことからも、「市の財政負担が大幅に軽減される」というのは、過大な新庁舎建設ありきの考えに基づくものであり、こうした新庁舎建設は「逆に借金を背負い将来にわたり市の財政を圧迫する」ことなのである。このことからも「将来の借入金返済時の一般財源支出を抑制できることから、この時期を逃すことなく建設を推進する」という理由は全くないのである。そうすれば当市の平成26年4月からの公共料金等の値上げもせず、平成26年度予算における補助金削減等の必要もなかったはずであり、近隣他市で行われているような、積極的な人口定住化策やまちの活性化策に予算をまわすことができたのである。

 さらに市長は、これまでマスコミなどに対して、「一般財源の投入は不要だ」「一般財源は投じない」などと説明してきたが、ここにきて回答書の中で一般財源の投入を認めている。しかし、ここに至っても全体事業費の内訳や、将来にわたり一体いくら一般財源の投入が必要なのかについては全く答えず、ただ国の財政支援制度により市の財政負担が軽減されるメリットを殊更強調し、豪華庁舎建設に対する問題意識を全く感じていないのである。

 

  • 4について

 まちの活性化や防災上の観点からも当面必要のない、企業局関連施設や教育施設を集約することにより規模が拡大するため『施設規模相応の経費が見込まれます』と述べるに留め、現庁舎の維持管理費が過大な新庁舎建物で2倍以上になると思われる事実や、ガラスが多用されるなど特殊な意匠を持つ新庁舎建物の維持管理費については一切答えていない。こうした大幅に増加する維持管理費のほとんどは毎年一般財源から持ち出すこととなるのである。当市の更なる人口減などで税収が落ち込むなか、市の財政状況は将来にわたり一段と苦しくなり、市の発展につながる前向きな施策などにほとんど手を打てなくなることが危惧されるのである。

 

  • 5について

 従来の主張を繰り返し、東日本大震災時に災害対策本部を消防新庁舎に移して対応したことや、この時期の国からの財政支援を主な理由として、市民にとってこの時期の過大な新庁舎建設(事業費130億円)を「最善の選択と考えます」と述べている。

 大震災時の災害対策本部は、現庁舎と目と鼻の先にある消防新庁舎(免震構造)に設置され、その消防拠点施設は十分活用され役割を果たした。

また、新庁舎建設(建て替え)にあたり、震災復興計画で位置付けし市民懇談会や市議会に諮りながら計画を市民に公表してきたとあるが、先に「2について」でも述べたように、その「位置付け」は震災直後の大きな混乱の中での不十分な検討であり、しかも計画のなかでは「改築が望ましい」と記されているだけであり「位置付け」というには程遠い内容のものである。

 こうしたなか市民懇談会も市議会も、当市の喫緊の課題(人口定住化、雇用の確保、中小企業支援、少子・高齢化、交流人口拡大策など)や将来にわたるまちづくり、そしてそれに伴う財政負担などほとんど検討した形跡もみられず、当市の急速に衰退する現状に目を背け、新庁舎建設(建て替え)最優先の一方的考えに基づいた検討に終始している。

 市民への公表についても、肝心の新庁舎建設事業費については、平成24年9月日立市新庁舎基本計画及び平成25年12月議会で総事業費105億が公表されたものの、それからわずか数か月後の平成26年3月議会には130億円となっている。約25億という多額の増額予算にもかかわらず、その確たる裏付けも示さないまま、深い議論もなく議会が可決したものである。 

また、国からの財政支援は耐震改修などにも当然適要されるのであり、そうすれば市の財政負担は一段と節減される。こうした折、市の建て替えありきで進められた多額の財政負担を伴う新庁舎建設計画と「通常の建て替え」の建設費とを比較することに何の意味があるのか理解できない。

私たちが要望しているまちづくりの観点や、肝心の新庁舎建て替え費用と耐震改修の費用との、費用対効果などの比較検討はほとんどなされていない。

 昨今の日立市内の人口急減(国内最大級)や経済の落ち込みなどに対し、何の策も打たず、時宜に叶った市の中・長期的財政計画も何ら市民に示さないまま、市民の意見に耳を傾けようともせず一方的に新庁舎建設へと突き進もうとする市の態度は全く独善的なものである。

過大な新庁舎建設は、市民の希望の芽をつむばかりでなく、次世代を担う子供たちにとって、「最善の選択」どころか大きなお荷物を残す「最悪の選択」と言わざるを得ない。

 

 

あとがき

 

 街から賑わいが消え衰退化が進む姿が市内のあちこちに現われ、若者をはじめ多くの市民が将来に夢や希望を失い住み慣れたこの日立市を去り、歯止めの利かない急激な人口減(国内最大級)となって表面化しているにもかかわらず、そうした状況を放置し、独善的に過大な新庁舎建設に猛進する市長、それを追認する市議会。

 一体今の日立市に何が起こっているのか、市庁舎建設問題を通して市民一人ひとりが、市政運営の実態を見つめて頂きたいと思う。

 水戸市とも肩を並べ県北の中核市として発展してきた日立市だが、その栄光は既に過去のものとなっている(現在人口:水戸市約27万に対し日立市18.6万)。にもかかわらず、こうした衰退傾向にある中でむしろ逆行し、依然として意味のない形だけの市民合意等を理由にして、平成26年4月20日号の市報で「新庁舎建設事業に本格的に着手します」とあくまで現計画のままで押し通そうとしている。

 近隣市町村においては、必死に人口減などを食い止めるべく、財政支援を伴う様々な具体的施策を行っている。

 一方当市の場合は、それでなくとも急激な人口減などにより、財政事情が苦しいため平成26年度予算は緊縮財政を余儀なくされており、まちの衰退に歯止めをかける具体的施策を打つどころか、この4月からは公共料金の値上げさえしているのが実情である。市当局には現下の厳しい状況に対する危機感が全く欠如しているのである。

 こうした折、さらに過大な新庁舎建設を強行すればどうなるのか、人口減少に拍車がかかるばかりか、産業経済の停滞を招き日立市は増々衰退するのみである。

 ところで、今回の庁舎建設問題に関して、市会議員や議会の対応には失望している。

 本来、議会は市民の代表である議員が民意を吸い上げて、議員の議決権を武器に市政を監視し、民意を市政に反映させる役割を担っている。

 しかしながら、市庁舎問題に関する限りは、行政側との馴れ合いにより、建て替え案を容認、追認してきた結果、このような市民感覚とは余りにもかけ離れた、過大かつ豪華すぎる庁舎建設を許さざるを得ない要因となっており、130億円もの一大事業に対し、何らのチェック機能を果たさなかった市議会の罪は重いと言わざるを得ない。

 こうした異常事態を憂慮し立ち上がったのが「日立市の再生を考える市民の会」であり、今後とも過大な日立市新庁舎建設の凍結を求める署名活動を継続し、市長・市議会に対して「市民の総意に基づいた市庁舎建設」を求めるものであります。

 

以上

bottom of page